
日本人のパスポート取得率は、わずか17.9%。10人に2人も持っていない計算だ。先進国の中でも際立って低いこの数字が意味するのは、多くの日本人が一度も国境を越えたことがないという現実である。
僕自身、工学系の大学に進学し、3年生から4年生に上がるタイミングで1年間休学してカンボジアへ飛んだ。食品系企業でのインターンという形で現地に渡り、抹茶ラテ専門店のマネージャー、食品卸の営業、さらには社内でのAI開発まで、さまざまな仕事を経験した。その後、出張という形で半年間タイに滞在し、現在は日本に帰国している。
この経験を通して強く感じたのは、「日本人は、もっと海外に出るべきだ」ということだ。特に若い世代には、留学ではなく、より実践的な海外インターンシップという選択肢を真剣に考えてほしい。
なぜ今、海外経験が重要なのか
異文化に触れることの価値
海外に出ることの最大の意義は、異なる価値観や文化に触れ、自分の視野を根本から広げられることだ。日本という均質性の高い社会で育つと、「当たり前」だと思っていたことが実は特殊であり、世界には無数の「当たり前」が存在することに気づけない。
ビジネスの進め方、時間に対する感覚、人間関係の築き方。すべてが日本とは異なる環境に身を置くことで、物事を多角的に見る力が養われる。この経験は、グローバル化が進む現代において、どんな業界でも求められる必須のスキルとなっている。
市場価値を高める「希少性」
海外留学をする学生は近年増えてきているが、実際に海外でインターンシップを経験している人はまだ圧倒的に少ない。この「珍しさ」こそが、就職市場における大きな武器になる。
企業は、実践的な海外経験を持つ人材を高く評価する。それは単なる語学力や異文化理解だけでなく、「未知の環境で成果を出せる実行力」を証明できるからだ。半年間の海外インターンという経験は、日本国内での長期インターンと比べても、希少性の高さから期待感を買ってもらいやすい。
まだ多くの学生がこの選択肢を取っていないからこそ、今行動すれば大きなアドバンテージを得られる。留学ほどハードルが高くなく、それでいて市場での評価は高い。コストパフォーマンスという意味でも、海外インターンは最高の選択肢だと言える。
「若さ」が持つ特別な力
海外に出て最も驚いたのは、若いというだけで、現地の人々が驚くほど親切にしてくれることだ。
例えば、僕がタイにいた時、日本人コミュニティに足を運ぶと、そこには大手商社やトヨタなどから駐在で来ている、それなりの役職を持つビジネスパーソンがたくさんいた。役員クラスの人とも気軽に話せる環境があり、彼らは20代前半の大学生である僕を、驚くほど大切にしてくれた。
なぜか。それは、彼らにとって、若い日本人と会話する機会が極めて少ないからだ。駐在員の多くは30代後半から40代以上。若い世代と接点を持つこと自体が新鮮で、だからこそ僕のような存在を貴重に思ってくれる。
日本にいるただの大学生や、国内で長期インターンをしているだけでは絶対に会えないような、ハイレベルな人材と繋がれる。これは海外に出た者だけが得られる特権だ。そして、彼らから得られる知見や人脈は、その後のキャリアにおいて計り知れない財産となる。
海外インターンという選択肢
留学は素晴らしい経験だが、どうしても時間とお金がかかる。一方で、海外インターンは比較的短期間で実践的なビジネス経験を積むことができ、場合によっては給与も得られる。
僕自身、カンボジアとタイで働く中で、マネージャーとして店舗運営に携わり、営業として取引先と交渉し、AI開発という最先端の分野にも挑戦させてもらった。これらは全て、実際のビジネスの現場で得た生きたスキルだ。
こうした経験は、教室で学ぶ理論とは比較にならないほど強烈に自分の中に刻まれる。そして、帰国後の就職活動や、その後のキャリアにおいて、確実に差別化要因となる。
海外に出て初めてわかる、日本の本当の価値
日本に住んでいると、どうしてもネガティブなニュースばかりが目に入る。経済の停滞、少子高齢化、政治への不信。メディアは悲観的な報道を好む。なぜなら、それが視聴率を取れるからだ。楽観的な内容よりも、危機感を煽る方が人々の注目を集めやすい。
だからこそ、国内にいるだけでは、日本という国の本当の価値が見えにくい。
僕自身、海外に出て初めて気づいた。日本がどれほど安全で、清潔で、インフラが整っていて、人々が誠実で、食事が美味しく、時間通りに物事が進む国なのか。当たり前だと思っていたことが、実は世界的に見れば驚異的なレベルだったのだ。
海外に出ることの最大のメリットの一つは、日本の良さを客観的に理解できることだ。外から見ることで初めて、この国がどれほど恵まれているかがわかる。そして同時に、改善すべき点も冷静に見えてくる。
世界はもっと広い。そして、その広い世界を知ることで、日本という国の良さも、課題も、より深く理解できるようになる。
今こそ、飛び出す時だ
パスポート取得率17.9%という数字は、裏を返せば、海外経験を持つだけで上位2割に入れるということだ。さらに、実践的な海外インターンとなれば、その希少性はさらに高まる。
若いうちに、リスクが低いうちに、思い切って飛び出してみよう。半年でも十分だ。その経験は、あなたの人生の財産になる。そして、市場はその経験を、あなたが思っている以上に高く評価してくれるはずだ。